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2020.02.28

年商1000億への挑戦ー。わずか14年で東証プライム上場。次々と事業を生み出し、加速していくベンチャー企業の道のりとこれから

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乾電池のリユース事業からはじまり、現在は全国に10箇所の物流拠点と2箇所のコールセンターを構え、取り扱う商材は趣味嗜好品から農機具や建設機械、医療機器といった専門商材まで幅広く、IT×リアルの両軸で世の中のニーズに応えているマーケットエンタープライズ。

前回の記事では、マーケットエンタープライズとはどういった会社なのか、そして東証マザーズ株価上昇率ランキング1位に至るまでの道のりを、代表取締役社長 小林泰士に振り返ってもらった。

▼関連記事:東証マザーズ株価上昇率ランキング1位の企業の正体

そんなマーケットエンタープライズは、長期的なビジョンとして「最適化商社」という言葉を掲げている。リユース事業を主軸としてきた同社がなぜ「商社」を名乗るのか、また「最適化商社」とは一体何なのか ―― 今回も同社を率いる小林に話を聞き、その真相に迫る。

世界にはリユースどころか、一次流通が十分ではない国もある。成熟した日本だからこそリード可能な「最適化商社」の形

―― マーケットエンタープライズがビジョンとして掲げる「最適化商社」とは、そもそもどういった意味なのでしょうか?

最適化商社とは、賢い消費を望む消費者に様々な選択肢を提供できる会社と弊社では定義しています。

消費活動について見てみると、いまは大量生産・大量消費の時代が終わり、価格を比較して消費する、また売ったり買ったりする消費が根付いてきています。消費者も売る前提で買い物をするといった二次流通を意識した消費活動が増えていて、さらにレンタルやシェアリングサービス含め、いろんな消費が多様化している時代だなと。

大量生産・大量消費の時代から消費に賢さを求める時代に突入し、ある意味 ”消費革命” みたいなものを感じているんですね。そして日本は成熟国だからこそ、二次流通が進んでいます。世界で見ても、日本のようにこれほど多くのリユース関連企業が上場しているのは珍しいわけです。

しかも途上国では、そもそも二次流通が生まれるほど一次流通が盛んになっていない国も多くあります。たとえばテレビの買い換えよりも、はじめてテレビを買う需要のほうがまだまだ多いんです。

つまり、消費活動が成熟している課題先進国の日本だからこそ、二次流通のマーケットがあるわけで、そんな日本から国内外の多様化する社会に対して、「賢い消費を望む消費者に様々な選択肢」を提供していく、という意志を込めて “最適化商社” と名付けました。

そのため、マーケットエンタープライズはリユース事業を主軸として成長してきましたが、現在はメディア事業、通信事業も当社の中核を担うサービスへと成長していますし、同時に、複数の地方自治体とともに「楽器寄附ふるさと納税」という取り組みも積極化させています。様々な取り組みを通して、今後も消費行動の最適化、および商品価値の再定義化を提案する企業として、ITとリアルの両軸で最適化を進めていきたいと考えています。

 
―― 最適化商社として、具体的にはどのような事業を展開しているのでしょうか?

例として弊社では趣味嗜好品のリユースだけでなく、農機具や建設機械、医療機器などのリユース事業も展開しています。たとえば新規就農者を含めた農業に従事される方々が農機具を買い揃える際、必ずしも新品の農機具が必要とは限りません。一般消費者だけでなく、農業に従事される方にとっても、中古の農機具を買うといった賢い消費が広がっています。

また医療機器領域は現在16カ国(※2020年2月28日現在)に対して商品を届けていたりと、日本ではまだなかったマーケットを作り出し、海外ではニーズがあるけど国内から商材が出ていっていない領域で商流をつくっているんですね。

そして多言語対応やインボイスなど、対海外だからこそ必要な対応含め、国内のネットオークションで一番販売している会社だからこそ、保証や流通を含めた様々なサービスを提供できる仕組みができています

その自社独自の仕組みがあることで、今後も様々な領域への展開が可能だと考えています。

マーケットエンタープライズの仕組みを活用した楽器寄附ふるさと納税


たとえば、6行政(2020年2月28日現在)と一緒に進めている『楽器寄附ふるさと納税』も、マーケットエンタープライズの仕組みならではの取り組みです。この取り組みは、寄附する楽器の査定価格が税金から控除されるというもので、たとえば3万円の価値がある楽器を寄附すると、3万円分の寄附金証明書が発行されます

全国の公立学校吹奏楽部では、慢性的な楽器不足という課題があるんですね。そして楽器を手放す方にとってはただ売却するのではなく、思い入れのある楽器だからこそ、必要としている人に使ってほしい、という想いがあります。

そこで弊社が持つ査定のノウハウ、データベースを活用し、眠っている楽器を必要としている学校に届け、かつ寄附によって税額が安くなるという仕組みを実現しました。

そして楽器を手にした学生の子たちは、通常の学校の予算では買えない楽器が届くことで感激してくれたり、また寄附してくださった方を演奏会に招待したりもしていて、寄附した方からは「眠っていた楽器が、本当に必要とする方に届いて嬉しかった」といったお声をいただきます。

学校の楽器が足りないという問題をリユースで最適化できたというのは、最適化商社を掲げるマーケットエンタープライズとしてとても喜ばしい取り組みになりました。

Win-Winのビジネスモデルを目指し、23歳のときに起業した小林が大事にする三方よしならぬ「七方よし」の考えとは

―― 小林社長は、「三方よし」の考え方を大切にしていると伺いましたが、その理由を教えていただけますか?

日本古来の商人の考え方のひとつとして “売り手よし、買い手よし、世間よし” という「三方よし」の考え方があって、昔から近江商人の経営哲学が好きで、そういった商売をしていきたいなと思っていたんですね。

というのも、学生時代からビジネスに興味を持っていまして。海外にバックパックで旅をしては、当時流行っていたターコイズを安く仕入れて日本で売る、といったことをしていました。この時期にアルバイトも20種類以上経験し、ますます商売の面白さに引き込まれていきました。

そして、裁量権のある仕事がしたくて、卒業と同時に創業社長が経営するベンチャー企業に就職し、1年半だけ会社員を経験したのですが、その会社では不動産から通信商材、フランチャイズパッケージなど様々な商材の営業販売を経験しました。しかし、商材によってはお客様にとってメリットを感じられないものもあったため、時として価値を提供できないと分かっていながらお客様に提案しなければならない場面もあって。

一方で企業の経費削減に繋がる商材などもあったのですが、そういった商材は気持ちよく売ることができたんです。それはお客様が喜ぶ姿が想像できたから。そのときに、一番大切なのは “Win-Win“ であることだなと痛烈に腑に落ちたのが原体験としてあります

そこでWin-Winのビジネスモデルで起業しようと、23歳のときに個人事業主としてスタートし、お客様に価値を提供できると思って始めたのが、廃棄される乾電池を譲り受けて法人に100本単位で売る「格安電池ドットコム」というネットサービスでした。後に事業譲渡することになったフリマ事業も同時に展開し、36都道府県でフリーマーケットを開催したりと、すでにこの頃から“Win-Win“ であることを意識した事業展開をしていました。

マーケットエンタープライズの企業理念

また、これからは「どれだけ持続可能な社会をつくっていくか」ということを意識することも非常に大切です。2015年9月に国際連合が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて弊社も取り組みを進めておりますが、消費者に対してのみならず、教育・平和・環境など社会全般にも同様に最適で持続可能な選択肢を提供すべきであると考えています。

そのため、いまは三方よしではなく「七方よし」、すなわち売り手、買い手、世間に加え、社員、株主、取引先、環境に良いことを大事にしようという考えです。

年商100億から1000億円カンパニーを目指して。主体者集団として世の中にないような組織体をつくっていく

―― 最適化商社として発展していくために大事にしていることは何かありますか?

事業成長の鉄則として、1つのプロダクトやサービスに絞るというのがセオリーだったりします。しかし日本の総合商社は、たとえば穀物からエネルギーに至るまで様々な商材を扱う特有のビジネスモデルで、セオリーには反しているわけです。

英語に訳すと “トレーディングカンパニー” とも言いますが、適切な翻訳が見つからず、そのまま “SOGO SHOSHA” と訳されることもあるほどです。

そして最適化商社を掲げるマーケットエンタープライズも同じく、セオリーに反して、様々な課題を解決し最適化していこうとしています。

そんな、あえて難易度の高いことをやろうとする最適化商社にとって大切なのは、主体者集団であること。経営的な視点で言えば、どんどん裁量権を渡していき、主体的なメンバーが集まったコングロマリットグループ(=複合企業体)として成長していくことを想像しています。

そうすることにより、たくさんの事業責任者が生まれ、たくさんの事業会社が生まれてくることで、お客様一人ひとりに対する小さなニーズから大きなニーズまで拾えるようになる、様々なことに対して最適化が行えるようになると考えているんですね。

また、個々のビジネスモデルは当然セオリーに基づき戦略的に展開しつつも、組織全体としてはセオリー通りではない、それぞれが局地戦を展開していくような戦い方をしていきたいなと。当然ハードルが高く難しいことではあるのですが、それを楽しんで取り組めるのは主体者集団だからこそ。

世の中にある会社をなぞるのではなく、世の中にないような組織体をつくるのは、社名にも ”市場を冒険的に創出する” という意味を込めたマーケットエンタープライズらしい、面白い動きだと思っています。

―― 最後に、最適化商社であるマーケットエンタープライズの展望を教えて下さい。

実は日本の上場企業のうち、創業社長が今なお現役で売上が1,000億円以上の企業というは、30社程度しかないんですね(2020年2月28日現在、自社調べ)。

弊社は今期(2020年6月期)、売上100億円の業績予想を発表しておりますが、当然そこがゴールなわけではありません。“商社” という言葉を掲げているわけですから、我々も次はいかに1,000億円を目指していくかが重要で、それくらいの規模にまで成長しなければ、最適化商社として新しい市場をつくったとは言えないと考えています。

ただし、単に1,000億円を目指しているわけではありません。世の中に価値を提供する企業であること、お客様から「あって良かった」と言われる企業でなければ意味がないと思っています。株式市場においても、実態のある売上、利益を生み出す企業体として、本質的な企業価値を認めてもらって初めて意味があると。

そして世の中は目まぐるしく変化していますが、一方で普遍的なものもあります。リユース領域で言えば、昔から質屋はあって、モノを換金する、という価値は昔からありました。

いまは情報格差がなくなり、情報の非対称性がなくなってきた時代ではありますが、普遍的な価値を見極めつつ、消費者が次に求めていることを常に学び続け、変化し続けて、提供していくことを大切にしなければなりません

当社でも、ますます多様化するお客様の消費行動に合わせ、全国の売り手と買い手をつなぐマッチングプラットフォーム「おいくら(加盟店約1,400店舗)」や全国の修理業者の情報提供プラットフォーム「最安修理ドットコム(加盟店約300店舗)」といったサービスを事業ポートフォリオに加え、自社だけではなく加盟店も含めた全国的な事業ネットワークを構築しています。

同時に、メーカーのD2C(Direct to Consumer)戦略の加速により、リユースのニーズは更に拡大しています。当社においてもメーカーの二次流通を意識した販売戦略における重要なアライアンスパートナーとして業務提携を推進しています。


今の延長線上でも様々なことが生まれていきますが、今後も多様化する消費者のニーズや世の中にあったサービスや事業を次々と生み出し、新たな時代のコングロマリットグループ “最適化商社”を主体者集団で築いていきたいですね。

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記事を書いた人

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